「その高配当株、10年後はゴミかもよ?」配当だけで選ぶ人がハマる罠

「配当利回り5%」その数字だけを見て株を選んでいませんか?

「高配当株」の人気が高まっています。
配当金を非課税で受け取れる新NISAの影響もあり、多くの投資家が魅力的な利回りに注目しているようです。

しかし、ちょっと待ってください。配当利回りが高い銘柄を軽はずみに「買い」と判断するのは危険です。実は、「高利回り = 高リスク」という冷酷な現実が潜んでいるのです。

配当利回りだけを見て銘柄を選ぶと、10年後には「ゴミ」となる株をつかんでしまうかもしれません……。

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この記事では、高配当株投資に潜む3つの大きな罠(わな)と、それを避けるための具体的な方法をお伝えします。
高利回りの甘い誘惑に惑わされず、高配当株をかしこく選ぶための知識を身につけて投資を楽しみましょう。

高配当株投資とは?

まずは、高配当株投資の基本を整理します。

投資で得られる2つの利益

株式投資で得られる利益には、大きく分けて2種類あります。
キャピタルゲイン(売却益)
株を買った時の価格と売った時の価格の差から得られる利益です。「安く買って、高く売る」キャピタルゲインを狙う投資も手法の一つです。
インカムゲイン(配当収入)
株式を保有している間に定期的に受け取れる配当金の収入です。企業が利益の一部を株主に還元するお金を配当金といいます。

「配当利回り」の計算方法と意味

高配当を判断する配当利回りとは、年間の配当金を株価で割ることで求められる割合です。計算式は以下の通りです。

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配当利回り(%) = 1株当たり年間配当金 ÷ 株価 × 100

例えば、株価1,000円の企業が年間40円の配当を出していれば、配当利回りは4.0%となります。

高配当株投資とは、インカムゲインの「配当金」を重視し、「配当利回りの高い」銘柄を狙う投資の手法です。

他の金融商品との比較

参考のため、主な金融商品の利回りと比較してみましょう。

■ メガバンクの定期預金:年最大0.3%程度
■ ネット銀行の定期預金:年最大1.5%程度
■ 個人向け国債(変動10年):年1.00%(2025年6月募集分)

(2025年6月25日時点)

これに対して、東証プライム市場の平均配当利回りは約2.42%(2025年3月、配当実施企業のみ)となっており、一般的に3.5%以上になると「高配当株」と呼ばれます。一見、とても魅力的に見えますよね。
しかし、ここに大きな落とし穴があるのです。

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高い利回り = 儲かる! の3つの罠(わな)

ここからが本題です。「高利回り」という心を動かされる言葉には、見落としがちな大きな罠が潜んでいます。
投資の世界には「高利回り = 高リスク」という冷酷な原則があり、これを理解せずに銘柄選びをすると痛い目に遭う可能性があります。

罠①:株価下落で収支マイナスのリスク

高配当株の最大の罠は、配当利回りに目を奪われて、株価の値下がりリスクを軽視してしまうところにあります。

具体例で考えてみましょう。
100万円で配当利回り5%の株を購入したとします。
購入後1年目、株価が変動しなかった場合、5万円(配当利回り5%)の配当を受け取れます。
その後株価が20%下落し、株式の価値は80万円になってしまいました…。

■1年目の収支
配当収入:+5万円
株価下落による含み損:-20万円
収支合計:-15万円の損失

この15万円の損失を配当だけで取り戻すには、年5万円の配当を3年間(合計15万円)受け取らなければなりません。つまり、最初の投資から4年経って、ようやく元本100万円に戻るのです。
これが株価値下がりのリスクです。

さらにリスクとなるのが、株価下落の原因が業績悪化の場合、配当自体も減額される可能性があります。そうなれば損失を取り戻すための期間はさらに長期化し、場合によっては半永久的に損失を抱えることになります。

なお、配当金には20.315%の税金が課されます。この点も注意が必要です。新NISAを利用する場合は、非課税となります。

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罠②:業績悪化による減配・無配リスク

高配当が永続的に保証されるものではないことも頭に入れておかなければなりません。景気や企業の業績悪化で「減配(配当金が減る)」「無配(配当金がゼロになる)」に転じるリスクが常にあります。

減配や無配となると、三重のダメージを受ける可能性があります。

1. 期待していた配当金がもらえない
2. 失望売りで株価が急落する
3. 一度下がった配当が元に戻る保証はない

罠③:一時的に高利回りに見えるリスク

最も危険なのが、配当利回りの「数字の罠」です。配当利回りは「配当金÷株価」で計算されるため、株価が下がれば見かけ上の利回りは高くなります。

業績悪化で株価が暴落した結果、計算上の配当利回りが異常に高くなっているケースがあります。この場合、近い将来に減配や無配になる可能性も考えられ、高利回りは一時的な幻に過ぎません。

「配当利回り○%」という数字だけで判断するのは非常に危険なのです。

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【実例】こんな銘柄が危険だった! 過去の無配事例

理論の説明だけでは実感が湧かないかもしれません。実際に発生した高配当株の罠の具体例を挙げます。どれも「まさか」と思われるような優良企業ばかりです。

■日産自動車:過去最大赤字で無配転落

日産自動車は2025年4月24日、2025年3月期の純損益が7,000~7,500億円の赤字となる見通しと発表しました。比較できる1986年3月期以降、過去最大の最終赤字となり、無配とすることも発表されました。

米国や中国などでの販売低迷に加え、経営再建に向けた構造改革費用がかさむため、最終赤字の赤字幅は同社が経営危機に陥っていた2000年3月期の6,844億円の赤字を大きく上回る規模となりました。前期まで配当を継続していましたが、業績急変により一気に無配に転落したのです。

日産の前期、最大の最終赤字7500億円で無配転落 構造改革費計上日産自動車は24日、2025年3月期の純損益が7000─7500億円の赤字(前の期は4266億円の黒字)となる見通しと発表jp.reuters.com

■あおぞら銀行:高配当の代名詞が一転無配へ

あおぞら銀行も衝撃的でした。2023年まで6%を超える高配当利回りで個人投資家に絶大な人気を誇っていましたが、2024年2月1日、状況は一変しました。

2024年3月期の連結純損益予想を従来の240億円の黒字から280億円の赤字に下方修正。同時に第3四半期と期末配当を無配とする方針を発表しました。
米国オフィス向け不動産融資への追加引き当てと、外国債券などの有価証券売却損が主な要因でした。
この発表を受けて株価は急落し、約3年ぶりの安値圏で低迷。高配当株として保有していた投資家の失望売りが広がりました。

あおぞら銀行株、3年ぶり安値圏 「無配」で個人失望売り – 日本経済新聞あおぞら銀行の株価が約3年ぶりの安値圏で低迷している。1日に2024年3月期の連結最終損益が従来の黒字見通しから一転赤字にwww.nikkei.com

■東京電力ホールディングス:「鉄板銘柄」の14年無配

最も象徴的な例が東京電力ホールディングスです。東日本大震災後の2011年4月、東電は設立直後を除き初めて無配になることを発表。かつての「電力株は安定配当の代名詞」という常識を覆しました。それから14年が経過した現在も復配の目処は立っていません。

東日本大震災による原発事故という予期せぬ大災害が、「絶対安全」と思われていた企業の配当を完全に止めてしまったのです。

配当政策・配当金|株主・投資家のみなさま|東京電力ホールディングス株式会社東京電力HD「配当政策・配当金」のページ。東京電力ホールディングス株式会社は、東京電力グループの持株会社です。福島第一原子www.tepco.co.jp

教訓:「高配当」に潜む落とし穴

これらの事例から分かるのは、どんなに優良に見える企業でも、業績悪化や予期せぬ出来事によって減配・無配に転じるリスクがあるのです。

1. 業界や企業規模は関係ない:様々な業種で発生
2. 予兆なく突然起こる:多くの投資家が「まさか」と思う企業で発生
3. 配当停止と株価下落の二重ダメージ:期待していた配当が消え、同時に元本も大幅減

【対策】失敗しない高配当株選びの5つのチェックポイント

失敗を避けるためには、単に利回りの高さだけでなく、その「質」を見極めることが重要です。ここでは、安心して長期保有できる高配当株を選ぶための5つのチェックポイントをお伝えします。

チェックポイント①:「なぜ配当利回りが高いのか?」を常に問いかける

まず最初に確認すべきは、「なぜその銘柄の配当利回りが高いのか」という理由です。

配当利回りが異常に高い銘柄は、業績不振や不安材料での株価の大きな下落による数字の罠の場合が多くあります。あるいは株主をつなぎとめるための無理な配当である可能性もあります。

また、記念配当など一時的に増配が行われるケースにも注意が必要です。創立○○周年記念配当や特別配当は、多くが翌年には元の水準に戻るため、惑わされてはいけません。

ただし、マーケット全体の下落などでの株価下落は、優良な高配当株を安く手に入れる絶好の機会となりうることも付け加えておきます。

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チェックポイント②:過去の配当実績と安定性を徹底確認

「安定的かつ増配傾向」の銘柄を選び、業績変動が激しい銘柄は避けるべきです。
例えば、花王三菱HCキャピタルは連続増配を続けており、これらは業績の安定成長の証です。こうした「連続増配株」や「累進配当」を掲げる企業は、減配リスクが低いと考えられます。

過去10年程度の配当履歴を確認し、以下の点をチェックしましょう。
・配当金額が安定しているか
・増配傾向にあるか
・過去に減配や無配になったことがないか
・配当政策が明確に示されているか

「連続増配株ランキング」ベスト20![2025年最新版] 35期連続増配の「花王」、26期連続増配で利回り4.2%の「三菱HCキャピタル」など、おすすめ増配銘柄を紹介連続増配期間が長い「連続増配株ランキング」を公開! 連続増配している株の「連続増配期間」を調査して、連続増配期間が長い株をdiamond.jp

チェックポイント③:「配当性向」で配当の持続性を測る

配当性向とは、純利益のうちどれくらいを配当金として支払っているかを表す指標です。

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配当性向(%) = 1株当たり配当金 ÷ 1株当たり当期純利益 × 100

配当性向が100%を超えている場合、企業が得ている利益以上の金額を配当に割いていることになり、持続可能な状態とはいえません。配当性向が高すぎる銘柄は、無理して配当を出している可能性があり、注意が必要です。
目安として「50%以内が合格点」と考えてください。配当が利益を超える状況は長く続きません。

また、「利益の30%を毎年配当に回す(= 配当性向30%)」といった配当性向に基づく企業方針がある場合、利益が減れば配当も減る可能性があることを理解しておきましょう。

チェックポイント④:企業の「5種類の利益」から実力を分析

営業利益や経常利益が減少傾向にある企業は、配当利回りが高くても注意が必要です。最終的に利益が安定しなければ、減配や無配になるリスクが高いためです。

企業の損益計算書に記載される5種類の利益をチェックしましょう。

1. 売上総利益(粗利益):商品の競争力、付加価値、ブランド価値を示す
2. 営業利益:企業の本業で稼ぐ力。減少傾向にある銘柄は避けるべき
3. 経常利益:資金運用など普段の企業活動全体の総合力。減少傾向は要注意
4. 税引き前当期純利益:一時的な損益を加味した利益
5. 当期純利益(最終利益):配当金の原資となるが、一時的要因で増減しやすい

企業の利益を見る時は、利益の持続性を確認することが重要です。特に営業利益と経常利益の安定性は、配当の持続可能性を判断する上で欠かせません。

チェックポイント⑤:株主還元方針と「ROE」から企業姿勢を読み解く

最近では株主還元方針として「累進配当」や「配当の下限」を掲げる企業が増えています。これらは企業の意識の高さを示す重要な指標となります。
東京証券取引所からの改善要請により、株主還元を強化する企業が増えている背景もあります。

ROE(自己資本利益率)も最近重要視されている指標です。企業の自己資本をいかに効率よく活用して利益を生み出しているかを見る割合で、優良企業との判断基準は10%以上と言われています。

利益が出ているのにROEが低い企業は、今後株主還元強化での増配などの期待があります。

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ROE = 当期純利益 ÷ 自己資本 × 100

情報収集に使える無料ツール

これらのチェックポイントを確認するためのサイトをご紹介します。
Yahoo! ファイナンス:配当利回り、配当性向、財務指標の確認
IR BANK:過去10年以上の配当履歴と業績推移をグラフで確認
各企業の公式IRページ:最新の配当政策と中期経営計画

高配当株投資で成功するには、これらのチェックポイントを総合的に判断することが不可欠です。企業の本質的な価値と配当の持続可能性を見極めましょう。

Yahoo!ファイナンス – 株価・最新ニュースリアルタイム株価、最新ニュース、株式掲示板などを提供する、投資やマネーの総合情報サイトです。株価指数、外国為替相場、日本株finance.yahoo.co.jp

IR BANK – 企業分析・銘柄発掘irbank.net

まとめ|高配当株投資で成功するために

人気が高まる高配当株投資は、企業分析が欠かせない奥深い投資手法です。

この記事で見てきたように、利回りの数字だけでなく、その「質」を見極めることが重要です。安心して長期保有できる高配当株を選ぶための5つのチェックポイントでのしっかりとした分析に基づいて、あなたの銘柄を選んでみてください。

夢の配当金生活を現実とするために……。

今回の記事が、あなたの高配当株投資に対する考えを見直すきっかけとなれば嬉しいです。

あなたの高配当株銘柄は?

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